漫画「鈴木先生」中学教師の鈴木先生…今日も色々な問題が起こる



漫画「鈴木先生」全11巻 著者 武富健治
★★★★☆ (個人評価 ★多めならおすすめ)
鈴木先生は中学2年生の担任。今日もクラスでは様々な問題が起こる。
真面目だった生徒が突然問題児になる、中学生と小学生の恋愛沙汰、避妊問題、性教育の弊害、問題がないと見なされ後回しにされる普通の生徒たち。
時には些細な、そして時には重大な事件を前に鈴木先生は真剣に立ち向かっていく。
最初は絵になじめなかった。
初期の梅図かずおみたいな、変にリアルな劇画チックな昭和の香りがする絵が好きになれなくてさ。ところが内容はきちんと現代。
今の中学生の問題なんやろな…と思えるような事件が次々起こる。
人間関係だったりね。
とにかく先生たちがみんな真剣。自分自身の問題に悩みながらも生徒を思ってる。
こんな教師たちばっかりならいいんだけどね。
確かに問題のある教師もちゃんと描かれてはいる。
それでもあまり悪い印象が持てない、なんでかな。
生徒たちもね、ああ、こういう人いたよなぁと思わされる。
リアルっちゃーリアル。虚構だっていえば虚構。
だって、悩む問題はリアルかもしれんけど、あそこまできちんと自分と向き合って先生とも向き合う生徒っているかなぁ。
いくら先生が情熱的に語ってもやっぱり受け入れない生徒は多く存在するはず。
中学生のころは、大人のエゴとか汚さとかが目につき始めて、自我も芽生えてたりするから、とにかく大人に反抗したい時期やんか。
いくら良い先生やと認めていてもあっさり受け入れられないっちゅーかね。
その辺はあまりに素直で良い子たちばかりすぎる。
でもね、常に鈴木先生は子どもたちに考えさせようとするんだけど、その過程がもう事細かに描かれていて考えさせられるばっかりやった。
避妊問題なんか特にそうやわ。
正しい性教育なしには避妊は語れないし、避妊を勧めるなら、今度は性行為を認めていることになってしまう。
ただただ性行為を禁止したってそれは大人のエゴやし、子どもを虐待死させる大人が現実にいる限り、性行為は神聖なものだと言い切ることもできない。
でもでもでもやっぱり自分の娘に対して、中学生で性行為を勧めるような発言はしたくないよね、実際。
もっと大事に…と言ったって、じゃいつまでなら大事にしたことになるのかって、答えがわからない。
避妊をしなさい、ではなく、避妊も認められているのだという鈴木先生の言葉に納得できるか否か。なかなか現実問題としては難しい。
それでも読んでると納得できる言葉がいっぱいある。
鈴木先生は決して聖人ではない。中学生の教え子に邪な妄想を抱いてしまったりもする。
人間的に弱い部分もしっかり見せてる。
そういうとこが共感するんやろなぁ。
そしてごまかしたり、嘘ついたりしない。生徒に対しても自分に対しても。
あそこまで自分の考えをしっかり持ってる教師っているのかな。
事なかれ主義で、問題さえ起こらなければよくって、教師は仕事だと割り切ってる先生が多いんちゃうやろか。
この漫画は教師にこそ読んでほしいわ。
例え、けっ、こんな教師いるかよ!みたいな感想になったとしても。
今の時代は大人が子供を失望させてると思う。
昔はもっと大人に権威があったように思うわ。
今は情報が溢れていて、大人の汚さとか未熟さを子どもたちが目の当たりにできるようになってる。
大人に対する尊敬を失っても仕方ないと思う。
先生だってそう。昔なら先生を呼び捨てするなんて考えられなかったし、少なくとも目上の人を大事にする気持ちを持てと教えられてきた。
今は先生は友達感覚、親でさえ決して完璧な人間じゃないと子どもは知ってる気がする。
大人が持ってる弱さや間違いを許せるようになるには、自分がもっと大人にならないとムリやん?
ところが鈴木先生の教え子たちは大人の汚さとかを知りつつも、鈴木先生を受け入れ敬い慕っているんだよね。
真面目に考え受け入れ理解する。こういうの理想やん。
中学生って微妙で、子どもだけど子どもじゃなくて、大人でもない、中途半端な時期やから余計にいろんな悩みや人間関係や問題が起こる。
そういう時期の学校を描いたってだけでも興味深いし、絵柄がね、最初嫌いやったけど、表情がデフォルメされてるだけに感情がより強く伝わるんよ。
読み終えた今はこの絵柄じゃないとあかんよなぁと思えるもん。
中学生はまだまだ子供ででも大人でもあって…そんな時期に知り合う人間って大事かもしれんね。その後の人生をも決めるくらい。
とりあえず絵柄で好き嫌いわかれるやろけど、ぜひぜひ読んでほしい漫画です!
リアルであってリアルでない中学生たちと教師を見てほしいですわ。
ま、最終巻近くは鈴木先生がまるで月影先生みたいになりますが。
そこも含めて面白いです。
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