本「マザー・マーダー」★★★☆☆母親は子供を守るためならどんな事でも…: 映画ドラマ小説舞台大好き

2025年05月31日

本「マザー・マーダー」★★★☆☆母親は子供を守るためならどんな事でも…

本「マザー・マーダー」　著者　矢樹純

★★★☆☆ （個人評価　★多めならおすすめ）

５章からなる連作中編集。
すべてのお話に関わってくる引きこもりの息子と毒親。
それぞれ全て様々な母親を描く。
そして5章で明かされる驚愕の真実とは…

マザー・マーダー (光文社文庫) - 矢樹純

ある母子がすべてのお話に関わってくる。
引きこもっている息子と息子を溺愛する母親。
この二人を軸に色々な母親が描かれる。
すべてに共通するのは少し普通じゃない母親…。

嫌ミスと呼ばれる小説にふさわしく、どのお話もすっきりとは終わらない。
どこかもやもや、う～～ん、な結末。
そしてミスリードされたことにより、え？そうだったの？という展開がいくつか。

真実は一体何なんだろう…というわくわく感で読み進められます。
出てくる母親はみんな癖のある人物。

1章なんか、あれでしょ？あの母親…。。。。
ええええ～。いいの？それで？という結末。
新しい家に引っ越してきた家族。
しかし隣の家は騒音苦情を言い立ててくる変わった女性が住んでいた。。。
この変わった女性とその引きこもり息子がこの小説の軸になる。

でもこれ嫌だよなぁ。賃貸ならともかく分譲であればそう簡単には引っ越せないし。
隣近所って大事。
ちょっとしたことでうるさいとか言われたら何もできないもんなぁ。
でもこのお話的には騒音よりももっと問題が…。
追い詰められた母親がとった手段がもう。
ただ娘のために…みたいなことを自分に言い聞かせてるけど、結局自分のためだよな。
自分の都合で、自分の理想を崩したくなくての行為。
それは娘を想うあまりの行動ではないあくまで自分本位の考えでしかない。
だからこの母親が苦境に立たされてもそこまで同情できないし、結果気持ち悪さが残ってしまうな。なんだよ、こいつ…って。

2章では、この騒音苦情おばさんの職場の同僚の女性のお話。
ここでも母親…というのが重要なファクターとなる。
この女性もまた母親ではあるんだけど、複雑な環境にある。
少しどんでん返し系かな。
そこまで驚いたわけでもないけど（強がり）。
もうひとつ手放した理由に納得いかんかったしね。

3章は介護施設に勤める男性が主人公。
男性が働いているのは引きこもりを預かり社会へ復帰できるようにする施設らしい。
でもまぁ結局は世話を見切れなくなった家族に捨てられた人たちがいるような感じ。
男性は依頼のあった引きこもりを引き取るためにある家に出向くのだが…。
ここでようやく、各章に共通する毒親（母親）がばーんと登場。
頭おかしい感じで。
ちょっとなんでこういうことするのか理解できんかったわ。
家には息子がいるんだよね？
誰もいない風な描写があったりしてよくわからなくなったわ。
ここでのどんでん返しはちょっとびっくり。
あ～そうなのか～と。それは考えなかったわ。

そして4章。
ここで引きこもり息子が登場。
息子の中学時代。まだ引きこもってなかった時代ね。
結構冷静で理知的なイメージ。
このイメージで次のラスト章を読んだら違和感が…。

5章でこの母子のやったことや、複雑な生い立ちなんかが判明。
それでもな～なんかな～。
息子が犯罪を犯すんだけどもうひとつ理由が腑に落ちなかったな。

そこまでの驚愕の真実！！って感じには思えなかった。
確かにえ？？？殺したのは？？と思わせておいて、ああそういう事なのか！と驚かされたのは確かなんだけど。

この小説全体にミスリードが散りばめられてて読者が誤解するようになってる。
で、真実がわかって、おおお～そうなのか～とは何度か思わされたわ。
でもね！私的にはもうひとつ犯罪理由が納得いかんし、そこまでの驚きは感じなかった。
シチュエーションには騙されたけどね。
中学時代の息子の感じだともっと冷静に判断できそうな気がするんだけどね。
ただ母親に毒されてるのかもしれんね。
普通の判断ができなくなっているのかもしれんけど。

全体的に嫌な感じの母親が出てきて歪んだ愛情を終始見せられる。
母親が子供を想う気持ちってもっと温かくて優しいものだと思うけど、出てくる母親はみんな微妙にずれてる感じがする。
気持ちが全くわからないわけではないけど、共感はできない。
その微妙な感覚のずれが気持ち悪さを覚える理由なんだろうな。

どうも読み終えたあとすっきり感がないな。
嫌ミスだし当たり前なんだけどちょっと違うもやもや感。
いろいろ驚く仕掛けは施されてて次が気になる展開だったのは確か。
この作者さんの他の小説も読んでみよ。
てことで★は三つにしておきました。
私は騙されないぞ！という自信がある方一度読んでみてはいかがでしょうか。
私はまんまと作者さんの思惑どおりに読んでました（どや顔で）。